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心の解放区

 


はじめてバンドを組んだのは高校1年生のとき。

僕は不良でも優等生でもない、成績も中くらい。

「趣味は?」と聞かれたら、ちょっと間をおいて「…音楽鑑賞です」とボソっと答えるような、つまりはどこにでもいる普通の高校生だった。

 

被害妄想と過剰な自意識のかたまりで、憎しみと苛立ちに毎日おおわれていた。

 


高校の同じクラスに、指村崇(さしむらたかし)くんという変わった男子がいた。

彼の特徴。

・マッシュルームカットとモヒカンのブレンド
・埼玉出身なのになぜか関西弁。
・誰ともつるまず、休み時間中はいつもヘッドホンをしながら音楽を聴いている。
・ダンスが好きでベースが弾けるらしい


ある休み時間、同じくひとりぼっちの僕は思いきって彼に話しかけた。


僕「いつも何聴いてんの?」

彼「えっ?音楽だよ」

僕「だからなんの音楽?」

彼「パンクさ。パンク」


彼はそう言って、ヘッドホンをはずし、いきなり僕の耳にあてがった。

耳になだれこんできたのは爆音で、ノイズのすき間からボーカルが叫ぶ声がかろうじて聞き取れる。

一瞬にしてイギリスのハードコアパンクバンド、GBHだって分かった。

こんなド田舎の男子校でGBHなんか知ってるやつがいることが僕にとっては奇跡だった。

ものの5分で意気投合した僕らは、好きなバンドを紹介しあった。

中学生の頃よく聴いたブルーハーツの「パンクロック」の歌詞がジャストでリアルだった。



友達ができた
話し合えるやつ
何から話そう
僕の好きなもの

ぼくパンクロックが好きだ
中途半端な気持ちじゃなくて
ああ 優しいから好きなんだ
ぼくパンクロックが好きだ




指村くんは僕に、彼の地元の親友、シゲオくんを紹介してくれた。

このシゲオくんって男子が、お笑いのセンス抜群で、リーダー性のあるやつだった。

僕らはまず3人でバンドを組むことにした。

シゲオはボーカル、指村はベース、僕はギター。

ドラムはあとからシゲオの幼馴染の藤野ってヤツが入ることになった。

シゲオの家は工務店で、お父さんは大工職人の棟梁だった。

東武東上線、若葉駅から歩いて30分。
森の中の木工現場の2階に、職人さんたちの宴会場を建てるということになり、普段、そこを職人さんたちが使わない時は、僕らが自由に楽器を持ち込んでスタジオ代わりに使ってもいいことになった。

僕らにとってその空間はパラダイスになった。
別に楽器を鳴らさないでも十分だった。

もうヘッドホンをする必要はなかった。
大人たちがそこを使わない夜に集合し、僕達は飲めないお酒を無理やり飲み、パンクを爆音でかけては、ゲラゲラ笑い転げ暴れまくった。

踊るというよりは身体をぶつけあって暴れるという感じ。
気が狂った激しいおしくらまんじゅう。
よく言って今のモッシュみたいなもん。


10代男子なら誰でもあり余るくらいに、みなぎっているワケのわからないエネルギーを発散させる場所。

そのうちだんだん、指村やシゲオの友達が何人も集まってきて、木工現場の2階は、さながら森の中のクラブになった。

そこは一時、高校生達の解放区になった。

モッズ映画「さらば青春の光」のシーンでまさにそっくりなシーンがある。

クラブにガキどもが大勢集まって、はじめ和やかに「BE MY BABY」が流れる中、THE WHOの「マイジェネレーション」に主人公が切り替えた瞬間、みんな一斉に踊り狂うシーンだがあるんだけど、まさにあんな感じ。

僕らは川越の老舗ライブハウス「CHICO」をはじめ、各所でライブを行い、木工所の2階でも何回もライブをやった。

でもガキが大勢集まればロクなことはない。

すぐ街中に「森の中で子供達がクスリをやってる」「横山木工所の2階は乱交パーティの巣窟だ」なんていう、でっちあげられた悪い噂が広まって、僕達はシゲオの親父に呼び出され、こっぴどくお灸をすえられてすぐに解放区は解散になった。

でももうそのころには、僕の中にあった得体の知れないドロドロは消えていた。

10代の頃、パンクロックに出会わなかったら僕は今頃セコい犯罪でも犯して刑務所に監禁されているに違いない。

救ってくれたのはバンドと、木工所の2階で爆音で鳴っていたパンクロックのおかげだったと信じたい。

だからパンクロックからは43歳になった今でも逃げられない。



ストラングラーズ
カオスUK
バッドブレインズ
バズコックス
あぶらだこ
非常階段
ギズム
SOB
奇形児
GAUZE
初期ラフィンノーズ
THE WHO
ニューヨークドールズ
コブラ
ブルーハーツ
ラモーンズ
THE JAM
GBH
ディスチャージ
シャム69
ダムド
STIFF LITTLE FINGERS
頭脳警察
ジョニーサンダース&ハートブレイカーズ
ベルベットアンダーグラウンド
THEピーズ
テレビジョン






指村は高校を卒業して、念願の大阪に行き、本格的に舞踏の世界に飛びこんだ。
(ネットで「指村崇」で検索すると彼の活動がいろいろ出てきます)

シゲオは実家の木工所をついで棟梁となった。

藤野は高校を卒業同時に同級生と結婚して2人の子供を作り今も埼玉県の鶴ヶ島市で幸せに暮らしている。

僕は今、当時の誰かから「満たされてるか?」と聞かれたら「どうかな?」と答えるだろう。

だけど、「じゃあ不幸せか?」と聞かれたら「いいや」と答えるだろう。

でも少なくとも僕はもう無差別に人を殺そうとは思わなくなったし、当時の僕みたいな人間でも生きやすい世界をつくりたい。

音楽がいつも隣にいてくれたことを僕は幸せに思う。






夏の早朝、ライブの練習のため、若葉駅から歩く田舎道

夏草が朝露で光ってる

背の高いひまわりに集まったミツバチがブンブンいってる

セミの鳴き声がやけにうるさいな

今日も暑くなりそうだ

レスポールのギターケースが肩に食い込む

からだが汗ばんできた

あいつら、もう来てるかな?

のどが乾いたからコーラを買っていこう



あの自動販売機の角を曲がって森に入れば、解放区までもうすぐだ
 

 

 


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

★4月9日(日)
東新宿 真昼の月・夜の太陽
「DIG IT!」
open/start 17:00/17:30
前売/当日 2000円(ドリンク別)

出演:うつぼ 、The Tallyhoes 、奮酉 、阿部俊宏 、こたなぎもみじ 、サリックス・ジョン(OA) 、西田チハル(OA)

※サリックス・ジョンは17:55〜出演となります。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

date:2017.04.05 Wednesday category:日記 comment:comments(0) trackback:trackbacks(0) by サカナスタイル


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